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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

しかし大体のカンで判っていた。

教頭や何人かの洋服男が、暮夜しきりに矢木家にやって来た。座敷でひそひそ話をして、そっと帰って行った。

城介といっしょに食逃げをした三人の父親は、一人は裁判官、一人は電鉄重役、一人は医師である。それを城介は知っていたし、栄介も知っていた。来訪する洋服男たちは、その父親か、それに関係した男たちであることを、栄介たちは本能的に察知していた。来客があると、栄介たちは納戸に追いやられたので、具体的に話がどんなに進行しているかは判らなかったけれども。

「あいつら、事件のもみ消しにやって来るんだよ」

薄暗い納戸の、長持に背をもたせかけて、城介は嘲けるように言った。

「おれだけを犠牲にして、自分たちの息子をたすけようとしてんだからねえ。うんざりするよ」

栄介はそんな城介の言葉に、調子のいい相槌を打つことは出来なかった。城介はもう退学の腹をきめ、追いつめられた猛獣の姿勢を取っていた。なぐさめの言葉も今さらそらぞらしかったし、またこの問題は城介だけではなく、栄介にからまって来てもいる。城介は退学すれば済むが、栄介はあと何年間かそいつらと同級生として過さねばならないのだ。