轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

東京行きを見送った時の態度と、まったく同じであった。城介は階段をとんとんとかけ上って、そのまま姿は見えなくなった。

「ああ」

彼は低くうめいた。切なさがどっとこみ上げて来た。

「これが見おさめかも知らないな」

一分間彼は土間に立っていた。それからスーツケースを提げ、くぐり戸から外へ出た。駅の方角に歩きながら、彼は考えた。

(あいつは感傷家で、おれより感傷的で見栄坊だから、涙を見られるのをいやがるんだ)

衣類を入れたスーツケースは、意外に重かった。着ている分には重くないが、まとめて手に持つと、ずしりとする重量感があった。右手から左手へ持ちかえながら、彼は追われるように急ぎ足で歩いた。その中どこかで道を間違えたらしい。

突然海が眼前にあらわれた。

彼は足を停めた。そしてそろそろと石垣まで近づいた。

海は暗く、波がゆたゆたと岸を洗っていた。彼方に船がいくつも停泊していて、点々と燈が見える。潮の匂いが初めて鼻にのぼって来た。彼はスーツケースを下に置き、じっと黒い海をのぞき込んだ。

(あいつ、最後に、とんでもないことを、言い残して行きやがったな)

酔いにしびれた頭で、彼はそんなことを考えた。