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ごくちゅうせいかつ

獄中生活

堺 利彦

「楽天囚人」1911(明治44)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,443 字 · 31 页

青空文庫

もっとも、これは我々軽禁錮および換刑の者のことで、役に就いている者はかえって日が暮しやすい。そこで軽禁錮の者でも、自ら願うて役に就くのが少なくない。永島永洲君からの見舞の端書に、「永き日を結跏の人の坐し足らず」という句があったが、我々凡夫、なかなかそんなわけに行かぬ。そこでいろいろな妄想空想で、僅に、自ら慰めることになる。

「チョイト、チョイト、旦那おあがんなさい。」「品川さん、大森さん、川崎さん、おあがんなさいよ。」(これは自分達が赤い着物を着て格子の前に坐っているところから、自分達を女郎に見立ててのざれ言)

「ヘイ、今日はよろし、魚源でござい、お肴は鯛に鰈に鮪の切身。」「ああそれじゃあ鯛を貰いましょう。片身おろしてお刺身にして下さい。しかし新しいかね、肴屋さん。」(これは後の障子と流し元の工合が、サモ台所口に似ているからの洒落)

「ああいい天気だな、今日はどこぞ遊びに行こうか。」「そうさなァ、上野から浅草にでも出かけようか。」「だが遠方に行くのは大儀だな。それよりかやっぱりあの桐の木の下でも散歩しようか。」「そうさ、それもいいな。じゃマア今日は出かけるのはよそう。