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ごくちゅうせいかつ
獄中生活
堺 利彦
「楽天囚人」1911(明治44)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,443 字 · 31 页
一一 眼鏡、書籍
甚だしきは、みなの者を運動に出す世話をするために、草履箱から草履を出して各房の前に並べてやり、運動が終れば、またその草履を集めて箱に入れてやることもある。これらはズンと風流なものです。
一一 眼鏡、書籍
最初予の一番困ったのは眼鏡をとられたことである。もっとも眼鏡がなくてはなんにも見えぬというほどでもないが、十一度ばかりの近眼で、十余来年寝るときのほか、かってはずしたことのない最親最愛の眼鏡であるから、いま忽然とそれと別れた不愉快は非常である。すぐあとで下げ渡してやるといわれた言葉を楽しみにしていたが、二三日たってヤット眼鏡下付願という手続ができた。モウ占めたと楽しんでいると、また二三日してやっと医者の視力検査があった。モウいよいよだと思うていると、また二三日してようやくのことで下げ渡された。
親子再会とでもいうべき情合で、ただ何となく嬉しく心にぎやかで、かけて見たりはずして見たり、息を吹きかけて拭いて見たりしているうち、どうも少し右の玉のゆがんでいるのが気に食わぬ。隣の人にもそれを見せて、ここを少しコウ曲げて、などといいながら、こわごわ撓めているとき、脆や、ポキリとまんなかの金が折れた。