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げんかくさんぼう
玄鶴山房
一、二「中央公論 第四十二年第一号」1927(昭和2)年1月1日発行<br>三~六「中央公論 第四十二年第二号」1927(昭和2)年2月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,434 字 · 25 页
けれども彼女の常識はすぐにそれもこう云う女には仕かたがないことと思い返した。お鈴はさりげない顔をしたまま、茶の間の隅に坐った親子に有り合せの菓子や茶などをすすめ、玄鶴の容態を話したり、文太郎の機嫌をとったりし出した。………
玄鶴はお芳を囲い出した後、省線電車の乗り換えも苦にせず、一週間に一二度ずつは必ず妾宅へ通って行った。お鈴はこう云う父の気もちに始めのうちは嫌悪を感じていた。「ちっとはお母さんの手前も考えれば善いのに、」――そんなことも度たび考えたりした。尤もお鳥は何ごとも詮め切っているらしかった。しかしお鈴はそれだけ一層母を気の毒に思い、父が妾宅へ出かけた後でも母には「きょうは詩の会ですって」などと白々しいをついたりしていた。その※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)が役に立たないことは彼女自身も知らないのではなかった。が、時々母の顔に冷笑に近い表情を見ると、※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)をついたことを後悔する、――と云うよりも寧ろ彼女の心も汲み分けてくれない腰ぬけの母に何か情無さを感じ勝ちだった。
お鈴は父を送り出した後、一家のことを考える為にミシンの手をやめるのも度たびだった。