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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

平らな路の間だけに、大きな花崗岩のロールを転がすことになった。

その日はもう大変にいい天気で、このごろにない暖かな日差しが朝早くから輝いて、日が上りきるとまるで春先のようにのどかな気分が、あたりに漂うほどであった。

一区切り仕事を片づけた禰宜様宮田は、珍しい日和りにホッと重荷を下したような楽な心持になって、新道のちょうどカーブのかげに長々と横たわりながら、煙草をふかし始めた。

久振りでいい味がする。

後から差す日は、ポカポカと体中に行き渡って、手足や瞼が甘えるように気怠るくなる。

見わたすと、彼方の湯元から立ち昇る湯気が、周囲の金茶色の木立ちの根元から梢へとほの白く這い上って、溶けかかる霜柱が日かげの叢で水晶のように光って見える。

仲間達の喋る声、鍬の刃に石のあたる高い響などが、皆楽しそうに聞えて来る。

禰宜様宮田は、何ともいえずのびのびとした心持になって来るとともに、また自分の心の奥にある露の雫のようなものへ、自分のあらいざらいが吸いこまれて行くような気がし出した。

ぼんやり眺めている眼には、すべての物象が一面に模糊としたうちに、微かな色彩が浮動しているように見え、いろいろの音響は何の意味も感じさせないで、ただ耳の入口を通りすぎる。