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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
ところがいざ入札になって割り込んだのが私である。私は入札者の申合わせを無視して、山陽の切込み炭百斤を斤三十一円五十銭の正価で入札、全量を落札した。入札の会場ははちの巣をつつく大騒ぎである。仲仕を使って殺してしもたる、とのうわさまでたったが、しょせん勝負は私の勝ちだった。
いままでだれにも話したことはないが「栄吉のからふご」で評判をとったこともある。もっともこれはとても自慢にはならず、私のざんげ話だ。当時汽船に石炭を売るときには、百斤入りのふごに入れたものである。そして決済のときには、使ったあとのからふごの数で計算するわけだ。これに目をつけた私はふごを二重、三重にかさねる手を発明した。つまり百ふごのうち三十ばかりはからっぽなのである。もちろん汽船の火夫は、松島の新地へ連れていって買収してある。しかし結局この手はバレてしまった。というのはからふごの割合が多すぎ、それを買った汽船が瀬戸内海で石炭が切れてエンコしてしまったのである。だがこんなことが、ある程度通るほど、当時の石炭屋の商売にはいまからみればずいぶんひどいやり口がはびこっていた。私は二十歳、そろそろ色ざんげの材料もつくる年ごろにはなっていた。