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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
成功して帰り、お雪を迎えにいくのが、ここまできた目的の一つでもあったのに……。しかしお雪の死は私をかえってはやり立たせた。お雪のとむらい合戦にでも出かけるように、再び一人ぼっちになって私は、つるから放たれた矢となって、京城をさして突っ走ったのである。
仁川から汽車に乗り、京城の駅におり立った。例によってなんのあてもない。駅前でぼんやりしていると、電車がやってきた。私はふらりとそれに飛び乗った。電車が動き出してから、車内をひとわたり見回すと、私の筋向かいに一見請負人らしい親分ふうの男が座っている。私はその男に近づいて声をかけた。
『つかぬことをおうかがいしますが、京城のキリスト教会はどこにございますんでしょうか』
男はぎょろとした目で私を見た。もちろんキリスト教会は、話のきっかけを作る口実である。この作戦は成功した。結局私はその男の家に世話になることができた。男の名は大宮定吉と言い、私の推察どおり大漢土木公司の親方であった。与えられた仕事は京城市の東南の龍山にある漢江の河原に出て、朝鮮人のバラスとりの監督をするのである。朝鮮語で『オソオソ!』、つまり早く早く、とせき立てながら監督するわけだ。