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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

かりに金鉱を見つけたとしても、どうしようとのあてもなかった。しかし大陸放浪熱にうかされた私たちは勇み立っていた。まず大連でひそかにピストルを買い、鴨緑江をみて安東県から徒歩で九連城、寛甸を通り、懐仁地方へと進んでいった。

満州の野は春だった。柳は芽をふき、楡の木立の芽もほころび、遠くからながめると紫のかすみがかかったようである。思いがけぬ谷間に集落があり、白い草花がまっさかりだ。また岡の上に高い望楼のある城壁をめぐらせた町があり、顔に刀傷のある男がぬっと出てくる。こんな間の中国旅館に二週間ばかり泊まったが、ある夜とうとう本物の馬賊の襲撃を受けてしまった。馬賊は鉄砲をうちながら宿の周囲をかけ回ったが、われわれに金がないのを知ると、やがて立去った。こうして冒険を続けながら、めざす二道河子の鉱山にたどり着いた。しかしどうも廃鉱らしい。ともかく金鉱とおぼしきものを採掘し、草河口を回って全くの無一文で三週間ぶりに旅順へ帰ってきた。

あとで分析してもらうと、二道河子の鉱山は金鉱でなく銅鉱で、しかも含有量がきわめて少ないものとわかった。しかし冒険旅行に満足していた私は、それを聞いても別段がっかりもしなかった。