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わたしのりれきしょ
私の履歴書
井上 貞治郎
――放浪の末、段ボールを思いつく
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页
私はデタラメの節をつけ、茶わんをたたいて歌い出した。
そのあとの、のりづけもひと苦労だったが、こうして日本で初めて生まれた「なまこ紙」に製品名をつけるのもたいへんである。弾力紙、波型紙、しぼりボール、コールゲーテッド・ボード……などいろいろ考えた末、私は最もゴロがいい“段ボール”に決めた。しかしさて売る段になると、またたいへんである。注文がなければ作るわけにいかず私は小さな見本帳を持って外交員に早変わり。浅草の深山洋紙店へ二百枚売れたのが手始めだったが、むしろ損害の方が大きかった。
櫛原じいさんは段ボールを束にしたのを荷車に積んでひき、本所、浅草方面の得意先へ届け、帰りに原料の紙を運んでくる。私は早く起きて、朝七時までに割引の往復切符を買って、段ボールの大きな荷物を背負い電車に乗る。しまいには荷物が大きいものだから、ほかの客に迷惑になると車掌がおこり出す。たいていの車掌に顔を覚えられてしまい、私の姿を見るとチンチンと急いでひもを引いて車を出してしまうようになった。仕方がないから私は遠くの乗換え場所まで歩いて行って、顔なじみのない電車にまぎれ込むことにしていた。