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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

大だんなの先代清兵衛氏も当時はまだご存命で、なかなかこまかい人だったと記憶している。なにしろ、この大だんなは石炭の袋をかついで売り歩き、一代で座古清の身代を作りあげた苦労人なのだ。

いなかからぼっと出の私は、朋輩の与吉や乳母、お手伝いさんたちからいじめられ通しだった。居眠りしている間に顔に墨を塗られて笑い者になったり、返事の仕様が悪いと小言を食ったりした。寒中のふき掃除や早朝の門前掃除で手足はしもやけで赤ぶくれになった。特に意地が悪かったのは備中の笠岡からきていたお米である。私がこっそりあたたかい飯を自分の茶わんに入れようとすると『貞吉っとん、それはお上のんでっせ』と奥に聞えよがしにいう。新しく出したつけ物を下の方に入れて『上から取れ』というのも彼女だった。あまりしゃくなので、ある日、仕返しにぬかみその堅いところを練って寝ているお米のしりのあたりにほうり込んでおいた。次の日様子をうかがうと、お米はしきりにしりに手をやって、においをかいでみたり、そわそわしている。私はおかしさをこらえて逃出したが、結局バレてひどくしかられた。

失敗もよくやった。若だんなに、お房を呼んでこい、といわれたので、あわてて『お房どん、お房どん、若だんなが呼んではりまっせ!』