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わたしのりれきしょ

私の履歴書

井上 貞治郎

――放浪の末、段ボールを思いつく

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,380 字 · 69 页

青空文庫

苦しかった青春時代を通じて私が得たのは、最初にも書いた「寝れば一畳、起きれば半畳、五合とっても三合飯」の雑草の根強さであり、二畳の座敷で考えた「良心に従って全力をつくして働き、気になること一つもなく、ぐっすり眠れるようになろう」との気持はいまも生きている。

しかし私はいま幸せだ。なぜならおりにふれて追憶し、楽しめる「苦しかった過去」を持っているからである。苦あればこその楽しみだ。苦しみを経た者しか、真実の喜びは味わえないと思う。

いろいろ女の話が出たが、最後にいまの妻の話をしよう。名は晴代と言い、私より十下のばあさんである。大正末に大阪の天下茶屋で世帯を持ったのだが、島之内の紙屋の娘で、前に書いたお雪を知るより前、妻が七つぐらいのときから知っている仲だ。「女房もらえば給料分が助かる」とへらず口をたたいた私だが、本心はやはり家庭が第一と思っている。家庭をうまく治められない男に仕事ができるはずがない。私の家庭――といってもたった二人きりの生活だがしごく円満である。それにいま初めて書くことだが、私がこれまで会った女のなかで、残念ながら、いまの妻ほどの者を見たことはない。