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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
種もつきた頃、妙なことを頼まれた。それは日本の竹馬の絵を探してくれというのである。高等学校時代に、人生問題に凝って、大学を卒業したら、人生で一番真面目な職業につこうと決心したことがあったそうである。そして現代のアメリカでは、サーカスの道化役者が、一番真面目な職業であると思い込んだ。道化役者になる一つの修練としては、高い竹馬に乗る必要があるそうで、高等学校時代に大いに竹馬に乗る勉強をしたという。それで竹馬には執着があるのである。話が面白すぎるので、いい加減に相槌を打っていたら、ポケットから、その時代の竹馬に乗った写真を出されたのには、いささか驚いた。
これは一つの例話にすぎないが、とにかく皆少し変っていた。少なくもヤンキイの概念からは、遠い連中であった。敗戦後の日本の科学界が、予想以上に急激に復活したのは、もちろん若い科学者たちの精進のせいであるが、その蔭には、この連中の親身な介抱が、一つの役割をもっていたように、私には思われる。無条件降服という世界の歴史にもまれな完敗を喫した国で、敗戦後十年を待たず、万国物理学会の総会が開かれたということだけでも、歴史に残ってよいことである。