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かがくはやくにたつか
科学は役に立つか
中谷 宇吉郎
「心」平凡社、1954(昭和29)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,240 字 · 41 页
少なくとも昨年くらいまでは、そうでしたよ。文部省には、気の毒な話なんです」
「そんなことになっているのかね。そういうことは知らなかった」
「あなたたちも、デモクラシーなんていう妙なものを教えて行ったから、それを皆守っているわけですよ」
ケリイさんは、非常に真面目な人であるが、こういう冗談もわかる人なので、こっちも気が楽なのである。
文部省の科学研究費は、大部分が全国の研究者に、三万円とか、五万円とかいう額に分けて分配される。それではまとまった研究ができないのは、当然である。しかし日本はアメリカなどと違って、これが研究者にとっては、唯一の研究費の出所なのである。しかも三万円とか、五万円とかいうのは、昔の金にしたら、二百円か三百円にすぎない。それくらいの金を一年間の研究費として費って、それで息をついているわけである。これは日本の文化水準を辛うじて維持するための最低カロリーであって、役に立つだの、立たないだのという方が、野暮である。
それで、この場合は、デモクラシーで結構なので、或る程度まで総花的であるのは、止むを得ないと思う。重点的もいいが、形だけととのえて、お茶を濁すのでは、意味が無い。