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かがくブームへのくげん
科学ブームへの苦言
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页
深海探測機
平凡な結論になってしまうが、科学ブームを本当に活かすためには、国民全体の科学知識を向上させるより他に、よい方法はない。それについては、一般大衆の成人教育には、ジャーナリズム或いはマス・コミ以外に、現在のところ、道がないのであるから、関係者はその点を常に頭に入れておく必要があるであろう。それには、まず間違った記事を書かないという、基本的なことからはいって行くべきである。
今日の大新聞の科学記事は、たいていは、かなり高級であって、専門的な知識も充分にとり入れてある。われわれ科学を職業としているものでも、大いに教えられることが多い。しかしときどき、一寸した卑近なことで、思い違いのあることもある。そしてそれが科学に対する一般の考え方に、案外に大きい影響をもたらす場合がある。話をわかり易くするために、実例について、話を進めよう。
深海探測機
昨年の六月にフランスの深海探測機が、日本へやってきて、三陸沖の日本海溝で、深海の探測をした。朝日新聞とフランス海軍との協同事業とかで、朝日新聞は、第一面のトップ記事として、大々的にこれを扱った。その時には、たしか十何回か潜水したが、そのうちの一回に、日本の佐々木博士が同乗した。