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かがくブームへのくげん

科学ブームへの苦言

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页

青空文庫

科学ブームに迎合してはならぬ

こういうわかり切ったことが、日本のジャーナリズムでは、何故問題とならないかという点については、本文ではふれない。それよりも、こういう風潮が進むと、何かジャーナリズムの方で期待している方向に、科学の方が迎合する傾向が出てこないか、という点が、少し心配である。

科学ブームに迎合してはならぬ

科学者が、暗黙のうちに、ジャーナリズムに迎合することは、必ずしも悪いとはいえない。社会の要求する方向に、科学が進んで行くという意味では、それにも意義がある。しかしそれは、ジャーナリズムが、しっかりしていて、日本の社会の要求を代表している場合のことである。近年の日本における、移り変りの速い、つくられた科学ブームの波に、科学者が乗ることは、よほど注意しなければならない。

戦後、日本の資源問題がやかましく論ぜられた頃は、TVAを範とする総合開発が、一時天下を風靡した形であった。新潟県へ行くと、新潟のTVA、岩手県には、岩手のTVA、鹿児島にも、北海道にも、といった工合に、全国に何十というTVAが計画された。

これは、もしできれば、非常によいことであって、水資源は、日本の貴重な資源の一つである。