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かがくブームへのくげん

科学ブームへの苦言

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页

青空文庫

。海洋学の定説というのは、そういう程度のものなのであろうか。

まあこういう意味の言葉であった。

これはたいへん面白い話である。さすがにベテランのジャーナリストというものは、偉いものである。一寸見ただけで破れるものが定説であったのはおかしい、というこの見方が、一々の科学知識よりも大切なのである。阿部さんは恐らく海洋学のことは、何も御存じないのであろうが、それでもこの記事が間違っていることは、すぐわかったのである。ジャーナリストは、科学のすべての面にわたって、正確な知識をもっている必要はない。科学者にも、それはできないことである。ただ「はてな」という気持の眼さえ開けていれば、疑問は出せる。疑問をもつことができれば、それで充分である。きく人はいくらもいるから、電話一本ですむ話である。

この例なども、いわば一寸魔がさしたというのであろう。そしてその魔の秘密は、どうも「放射性廃棄物の処理法」にあったのではないかと思われる。放射能ときくと、すぐにぴんとくるので、忽ち「海洋学を新しく組み変える大発見」が産まれたのではないかという気もする。この邪推は、次の日の毎日新聞の短評欄を見たときに、ふと頭に浮んだことである。