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かがくブームへのくげん
科学ブームへの苦言
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,269 字 · 24 页
きたるべき原子力時代では、放射性廃棄物の処理が、世界的にいって、一つの大きい問題であることには、間違いがない。それでこの方面の学者たちは、いろいろな案を出しているが、その中に、深海へ捨てるという案もある。日本海溝とはいっていないが、もっと深くて、陸地からもっと遠い海はいくらもある。
ところで、その捨て方であるが、それは何も灰をそのまま捨てるのではない。頑丈な金属の容器に密封して捨てるのである。そうでなかったら、第一、船へ積み込むこともできない。
ところで秒速数センチというのは、流速計にもかからないくらいの遅い流れである。そんな流れでは、石ころも流せない。岩乗な特殊鋼の大容器に、廃棄物がいっぱい詰められたものが、そんな微弱な水流で流されるとは、到底考えられない。とくに深海の底は、厚い泥土で蔽われているので、容器は泥土の中にもぐり込むはずである。
問題は、長年月の間に、容器が海水で腐蝕されて、中身が流れ出さないかという点にあるが、今日の発達した金属物理学をもってして、海水の腐蝕に耐える金属くらい、できないはずがない。問題があるとすれば、如何にしてそういう合金を安価につくるかという点にあるので、バチスカーフとは、関係のない話である。