轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1951(昭和26)年10月~1952(昭和27)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,798 字 · 91 页
――なに者だろう。
こう思っていると、向うで不審そうにこちらを見た。そこで孝之助は自分の名を告げ、事情を簡単に述べた。
「おや、そうでございますか、それはようこそ」彼女はなめらかに云った、「――わたくし岡村の妻でございますの、吃驚なさいますでしょう」
上から見るような眼つきである。妻と聞いて、孝之助はむろん驚いた。彼女はさもあろうという表情をし、いかにも世馴れた調子でいたずらっぽく秘密めかして云った。
「いちど国許を見たかったんですの、それで岡村にねだりましてね、なかなかうんと云わなかったんですけど、とうとう説き伏せまして、男姿になってまいりましたの、ええずっと男の恰好でとおしましたわ」
こちらの困っている事情などは、聞きもしなかったというふうであった。そして、自分の云うことだけ云うと、目礼をして去っていった。
――これはいったいどういうわけだ。
孝之助は苛立ってきた。妻に済まない、この家へ来ただけでも、杉乃には辛いことだろう。そのうえこんな扱いを受けたのでは、おそらく耐え難いにちがいない。どんなに怒っていることか、そう思って殆んど途方にくれた。
やがて時刻になり、広間で酒宴が始まったが、主人側の態度は少しも変らなかった。