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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

気の弱そうな潮田春樹は、両手をズボンの衣嚢に突込んだまま、ぞっと身を慄わせるのです。

「僕もそれを感じて居るよ、――が、唯それ丈の事で神経を脅かされる君でもあるまい、外に何んか、気の付いたことは無いのか」

千種十次郎は新聞記者らしく、巧みに相手の口占から、何んかを手繰り出そうとして居ります。

「いや、何んにも、それ丈けのことさ、君も知っての通り、僕は気が弱い上に、スピリチュアリズムの信者でね」

「算盤の選手がスピリチュアリズムは変な取合せだね」

「先学のロッジもロンブロゾーも科学者だよ、会社員が霊の交通を信じても一向差支は無い」

「むきになっちゃいけない、――算盤の選手と言ったのが悪ければ、文化人とでもビジネス・マンとでも言い直して構わない、――が此家にイヤな事件が起って居ることは事実だ、君は一刻も早く美保子さんを連れて帰った方が宜いだろうと思うが」

「有難う、俺もそうし度いとは思って居る、が奈々子さんが容易に妹を放さないし、我々若い社員が、お歴々より先に帰るわけにも行かない」

「勤め人はそう言った遠慮もあるだろうな、其処へ行くと新聞記者は有難いよ、会場の空気がつまらなくなると、記事の締切時間だからという口実で、どんな場所からでもサッサと帰れる。