轻松读懂日语经典作品
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页
早坂勇は千軍万馬往来で、面会謝絶や居留守には馴れて居りました。日頃は寧ろ弱気で好人物の早坂勇ですが、仕事の事となると、俄然性根に筋金が入って、梃でも動かない闘士になるのでした。
が、熊谷家の大玄関一パイに溢れた飾電燈の光に照し出されて、樫の大扉を背に、大理石のモザイクの上に立った、足の勇の風采もまた抜群だったのです。長い髪の毛をベートーヴェンのように振り乱して、羊羹色の大外套、ボヘミアン襟飾にゴム長を穿いた恰好は、モーニングやエブニング・ドレスを着飾った、紳士淑女の夜会に飛込むような代物ではありません。
「でも、御用件を伺わないと――」
本田大助はまだ汚い名刺を二本の指につまみ上げて、モジモジして居ります。長目の毛を鍋冠りに撫で上げて、細面に何やら塗りたくったらしく、ピカピカする顔、赤縞のネクタイ、仕立ての良いモーニング、年は四十近いでしょうが、何様以て五分もすかさぬ典型的な秘書です。
「新聞記者が事件の現場へ来たんだ、用件なんかあるわけは無いぜ、君」
勇は少しムッとしました。
「それじゃお取次申すわけには参りません」
「そんな馬鹿な事が」
この争は併し長くは続きませんでした。