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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

「ロック」筑波書林、1948(昭和23)年12月~1949(昭和24)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,687 字 · 55 页

青空文庫

「では一丁つけさせよう、ブランデーはききが良すぎて楽しみが少い、――ところで、先刻から噂をして居たというのは、君に急用が出来て、捜し廻って居たのだ」

花房一郎は女給に日本酒の熱燗を命じ乍ら、千種十次郎を自分の前の席に据えました。

「気味が悪いな、花房探偵に捜し廻されちゃ――尤もお尋ね者になるほどの覚えも無いが」

千種十次郎は少々グラ付く椅子の上へ、疲れたらしい身体を投り込みました。

「いや、あまり潔白な口はきいて貰い度くないよ」

「?」

「例の熊谷三郎兵衛の令嬢失踪事件だ」

「あれから二週間も経って居るが、目星はつかないのかな、ピカピカするようなお嬢さんを一人、東京が広くたって、そう何時までも隠して置けるものじゃない」

「警視庁の弾劾か」

「いやそう言うわけでも無いが」

「君が協力してくれさえすれば、もっと簡単に解決する筈だと思うが――潔白な口をきいて貰い度くないというのは其処だよ」

「はてな?」

千種十次郎は、何んか知ら大タジタジです。

「最初から話そう――あの令嬢の失踪した部屋で傷けられた、潮田春樹の妹の美保子さんは、犯人の顔か素性を知って居なければならないのだよ」