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こうばいつきげ

紅梅月毛

山本 周五郎

「富士」大日本雄辯會講談社 、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,869 字 · 32 页

青空文庫

などと耳こすりをした。そんなありさまを見たり聞いたりするたびに、お梶は自分が嗤われているような屈辱を感じて身が顫えた、しかし半之丞はまるでどこを風が吹くかという態度で、少し経つと屋敷の外までその駄馬をせめに出るようになった。

その月の末に半之丞は桑名を立った。しゅくん本多忠勝はもう四月はじめに伏見へのぼっていたのである、かれは家士二名と和助をつれてでかけた、自分は例の駄馬に乗り、牡丹は和助に曳かせて、……門まで送って出た阿市はあでやかに着飾り、濃い化粧をした耀くばかりの美貌にいっぱいの微笑を湛えていた。「どうぞお勝ちあそばしますように、めでたい知らせをお待ち申しております」美しく澄んだ声でそう挨拶をする阿市のうしろから、お梶は身を隠すようにしてじっと主人の姿を見まもっていた。半之丞はなにも云わないで、黙々と駄馬を駆って立っていった。

伏見へ着いたのは五月二日だった。本多家の屋敷へはいると、先着して待ちかねていた家中の人々が早速かれをとり巻いた。「牡丹の調子はどうだ」「榊原では日根野が出るぞ」「外様諸侯にも評判の催しだ、きっと勝てよ」「桑名一藩の面目がかかっているぞ」