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こうばいつきげ

紅梅月毛

山本 周五郎

「富士」大日本雄辯會講談社 、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,869 字 · 32 页

青空文庫

八

と促した。それでようやく半之丞は面をあげた、「恐れながら御側までお伺い仕ります、今日のお催しは馬の良し悪しを較べるのでござりましょうか、乗りこなす技くらべでござりましょうか」「…………」家康の眉がきゅっと歪んだ。

八

「本多家の家風といたしまして」と半之丞はしずかに続けた、「名馬逸物を飼うは申すまでもございません しかし第一には、馬術の鍛錬が大切と戒められております、いかなる名馬駿足も、戦場に臨んでは敵の箭弾丸にうち斃される場合がございます、さようなときには有り合う放れ馬の良し悪しにかかわらず取って乗る、たとえ小荷駄の馬なりとも乗りこなしてお役にたつ、これが本多家の馬術の風でございます、今日のお催しが名馬較べでありましたならわたくしの誤り、もし馭法くらべでございますなら、馬についての御不審は……」「わかった、もうそれでよい」家康は頷きながら微笑を含んだ眼で忠勝をかえりみた。「忠勝どのお羨ましいご家風じゃな」「若輩者の過言でございます、お聞き捨てのほどを」「いやいや忠勝どのらしいお心掛け、珍重でござる、まことに、今日の催しは名馬較べではおざらなんだ、馬咎めは筋が違いましたぞ」