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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

在线阅读岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 页

青空文庫

(三)鼓子花

(四)唐辛

(五)夜泊の船

(明治37・11)

(三)鼓子花

午後三時頃、白河停車場前の茶店に休む。隣りの床几には二十四、五の小粋な女が腰をかけていた。女は茶店の男にむかって、黒磯へゆく近路を訊いている。あるいてゆく積りらしい。

まあ、ともかくも行ってみようかと独り言を云いながら、女は十銭の茶代を置いて出た。

茶屋女らしいねと私が云えば、どうせ食詰者でしょうよと、店の男は笑いながら云った。

夏の日は暑い。垣の鼓子花は凋れていた。(明治39・8)

(四)唐辛

日光の秋八月、中禅寺をさして旧道をたどる。

紅い鳥が、青い樹間から不意に飛び出した。形は山鳩に似て、翼も口嘴もみな深紅である。案内者に問えば、それは俗に唐辛といい、鳴けば必ず雨がふるという。

鳥はたちまち隠れてみえず、谷を隔ててふた声、三声。われわれは恐れて路を急いだ。

仲の茶屋へ着く頃には、山も崩るるばかりの大雨となった。(明治43・8)

(五)夜泊の船

船は門司に泊る。小春の海は浪おどろかず、風も寒くない。

酒を売る船、菓子を売る船、うろうろと漕ぎまわる。石炭をつむ女の手拭が白い。

対岸の下関はもう暮れた。寿永のみささぎはどの辺であろう。