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きどうむかしがたり

綺堂むかし語り

岡本 綺堂

在线阅读岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 页

青空文庫

我が家の園芸

八百善の料理も食った。家台店のおでんも食った。そのいろいろの思い出がこの歯一枚をめぐって、廻り燈籠のように私の頭のなかに閃いて通った。

私はその歯を把って海へ投げ込んだ時、あたかも二尾の大きい鱶が蒼黒い背をあらわして、船を追うように近づいて来た。私の歯はこの魚腹に葬られるかと見ていると、鱶はこんな物を呑むべく余りに大きい口をあいて、厨から投げあたえる食い残りの魚肉を猟っていた。私の歯はそのまま千尋の底へ沈んで行ったらしい。わたしはまだ暮れ切らない大洋の浪のうねりを眺めながら、暫くそこに立ち尽くしていた。

前の下歯と後の上歯と、いずれもそれが異郷の出来事であった為に、記憶に深く刻まれているのであろうが、こういう思い出はとかくにさびしい。残る下歯六枚については、余り多くの思い出を作りたくないものである。(昭和12・7「報知新聞」)

我が家の園芸

上目黒へ移ってから三年目の夏が来るので、彼岸過ぎから花壇の種蒔きをはじめた。旧市外であるだけに、草花類の生育は悪くない。種をまいて相当の肥料をあたえて置けば、まず普通の花は咲くので、われわれのような素人でも苦労はないわけである。