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きどうむかしがたり
綺堂むかし語り
岡本 綺堂
在线阅读岡本 綺堂《綺堂むかし語り(きどうむかしがたり)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 183,656 字 · 363 页
二 怪談
人は昔と違っているであろうが、氷屋や甘酒屋の店も依然として出ていた。立ちン坊も立っていた。
その懐かしい少年時代の夢を破る時が遂に来たった。かの長州ヶ原がいよいよ日比谷公園と改名する時代が近づいて、まず其の周囲の整理が行なわれることになった。鰻の釣れる溝の石垣が先ず破壊された。つづいてかの柳の大樹が次から次へと伐り倒された。それは明治三十四年の秋である。涼しい風が薄寒い秋風に変って、ここの柳の葉もそろそろ散り始める頃、むざんの斧や鋸がこの古木に祟って、浄瑠璃に聞き慣れている「丗三間堂棟由来」の悲劇をここに演出した。立ちン坊もどこへか巣を換えた。氷屋も甘酒屋も影をかくした。
それから三年目の夏に日比谷公園は開かれた。その冬には半蔵門から数寄屋橋に至る市内電車が開通して、ここらの光景は一変した。その後幾たびの変遷を経て、今日は昔に三倍するの大道となった。街路樹も見ごとに植えられた。昔の涼風は今もその街路樹の梢におとずれているのであろうが、私に涼味を思い起させるのは、やはり昔の柳の風である。(昭和12・8「文藝春秋」)
二 怪談
お堀端の夜歩きについて、ここに一種の怪談をかく。