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びじんたかじょう
美人鷹匠
大倉 燁子
「婦人倶楽部 一八巻九号」1937(昭和12年)7月増刊号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,870 字 · 26 页
小夜子の頭には幼い頃からの数々の病気や、幾夜眠らずに附き添って世話をした記憶がつぎつぎと浮んでくる。看護婦にさえ出来ない看護をしてやった、それが血を分けた親でなくてどうして出来るものか。
「お母様、――ただいま」
バタバタと達也が茶の間に飛び込んだ。ランドセルを背負ったまま、母の膝へ寄りかかり、甘えるように顔をすりつけて云う。
「お母様、鷹狩見に行ってもいい?」
「どこへ行くの?」
「横町の空地。――お母様も一緒に行って頂戴、僕も鷹狩やってみたいなあ」
母は達也の首からランドセルを外してやり、
「鷹狩ってどんな事をするの? 危なかないの?」と訊いた。
「危ないもんか、――迚も愉快なんだ」
「そう? じゃお母様にも見せて頂戴」
「皆がやるんだよ、お母様、鷹を放して雀や鳩を捕らせるの、迚も面白いんだ、まるで昔の武士になったような気持がするッて、武田君が云ってたよ」
小夜子は達也に急き立てられて出かけた、なるほど空地の真中は一杯の人だかりだった。人垣を覗いてみると、最近勃興しかけた鷹狩を真似て、芸人風の男女が子供相手の商売をやっているのだった。
そこは大きな屋敷跡で、庭になっていたところにはまだ樹木がそのまま残っている、松の樹の根方には菅編笠を被った若い女が、きりりとした身拵えで立っていた。