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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

取引き仲間にトバッチリをかけると、あとでたたられる。うるせえのは、それさ。(ウィスキイのビンを村子にわたして、シガレット・ケースを出し、シガレットを抜く)

村子 すると、なんなの、いつまでこうしてるの、あたいたち? (じぶんのシガレットの火を男の方へ出す)

花岡 (それを取って吸いつけながら)なに、三十分もしてから出かけりゃ、大丈夫だ。

村子 いえさ、ここにいるぶんには、明日までだって……こんなか、あったかいから、なんだったら今夜一晩ここでとまることにするのも、おもしろいけどさ、私のいうのは、いつまでも、逃げて歩くといったって――

花岡 なあに、一月もたてばホトボリが――そうよ、事が事だから、さめっちまいもしまいが、その時分にゃ、どうせ、事件のカッコウがだいたいハッキリするから、おれだけを追いまわすということもなくなる。

村子 だってあんた、そんな……キリのない話じゃなくって? ヤだなあ。

花岡 いいじゃないか。こんだけ(とボストン・バッグの先でこづいて見せ)したくはして来てる。ここらの温泉で一月や二月、どんなゼイをつくせばって、不自由はさせない。

村子 そりゃ、なんだけどさ……(白いくびを見せて、ウィスキイをのむ)……けど、それならそうと前にいってくれりゃ、そのつもりでなにして来るのに。