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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

それから落ちているシガレットを拾いとる。が、吸おうとはしないで、指にはさんだまま、その手の別の指でヒタイをかく。……かいている間に、この男のそれまでの寝ぼけたようなところが、すこしずつはがれて行く。……花岡と村子は、相手がなにか異様なことでもはじめそうに予期して、それに対して身がまえしていたのが、佐山のようすがあたりまえ過ぎるので、ホッとして身がまえを捨てるが、同時に、今度は逆に、そのあたりまえ過ぎる佐山にビックリしている……)

佐山 ……(二人の方を見て、弱々しく微笑して、かすれた声で)こう見えても徐州一番乗りの本職だぞ。ホントからいやあ、今ごろ、こんな内地の山ん中で、穴っぽりなんぞしてる俺じゃないんだ。てめえら、ナメやがると承知しねえ。……口ぐせでね。わめきながら、シャベルでなぐりつけるんですよ。古い兵長で、三度目の召集だって……なぐりはじめると、シャベルの柄が折れるまでやるんです。蹴りたおされて踏んづけられて……すると、口からも鼻からも血が出るんです。二日に一度ずつぐらい、やられた。……(いいながら、シガレットを握ってない左の手のひらで、口と鼻を横なでにこすって、その鼻しるとヨダレのついた手を見る。