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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

血ではないので、ビックリして考えている。……まだ時々夢を見ているような気もちになるらしい。……頭をブルンと振る)……いや、今の、この……いや、もっと、この……軍靴ですからねえ、クギがついているから、ここんとこなんぞ――(いいながら、首すじの横をなでる)すりむけて、痛いや。……(なんの感情も抑揚もなく、まるで他人のことを語るように、なげやりにヌラリクラリと話す。話の脈絡やテニヲハなども、どうでもいいらしい)毎日、今日は死ぬだろう、今日は死ぬだろうと思って――死にたかったなあ――首をくくって、ぶらさがってもいいんだ。三四人、戦友に、ぶらさがった奴がいるんですよ。朝起きてみると、いなくなってる。そのうちに、山ん中のどっかで、ハナたらして、腐りかけている。良い気持だったな。ザマミロ。……ザマミロ。かんたんだ。ブランコだけは、いつなんどきだって、自由にやれるんだ。……どんなふうにだってイジメて見ろ、なぐって見ろ。食いものを食わさないで見ろ。徐州が来たって中隊長が来たって、大将が来たって――ふ! ブランとぶらさがりゃ、もう手は出せないんだ。首をくくるのが、いつでも自分の好き自由にやれるということが、どんなにすばらしいことか、知っていますか? 自分のイノチは自分の手の中にあるんだ。