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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

……その間に、水を飲みおわった佐山は立ちあがって、フラフラと歩いて、自分の坐っていたところへもどって来て、二人のようすを見ながらチョットの間立ったままでいる。以前のままの調子なのは、この男だけ)

佐山 ……(ユックリ腰をおろしかけるが、コートのはじの地面の上に、村子が叫んだ時にほうりだした、吸いかけのタバコが落ちているのに目をつけて、二歩ばかり進んで、それに手を出すが、途中でやめて花岡と村子へ)いいですか、これ?……(花岡と村子は、相手の意味がわからず、佐山を見る)……(返辞がないので佐山はそれを拾いあげ、泥を吹き払ってから、そばのロウソクの火に持って行って吸いつけ、煙を吸いこみながら、自分の場所に行って腰をおろす。……その弱々しい極端にユックリした動作を、マジマジと見ているうちに、いつの間にか花岡のふるえがとまり、村子の発作がしずまっている)

花岡 フ! (すこし無理をして笑って見せて)なあに――

村子 ……(ガタリとして坐っている)

花岡 (佐山に)地盤のいちばんやわらかいのは、入口の左がわだって、君あいったね?

佐山 ……いや、右がわですよ。

花岡 だから、そりゃ外から、向ってだろう? 内からは左だ、だから。