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はなのきむらとぬすびとたち
花のき村と盗人たち
「花のき村と盗人たち」帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,710 字 · 20 页
人を見さえすれば、こいつ、かたりじゃないか、すりじゃないかと思うようなわけさ。ま、わるく思わないでくれ。」
と老人はいいわけをしてあやまりました。そして、仔牛はあずかっておくことにして、下男に物置の方へつれていかせました。
「旅で、みなさんお疲れじゃろ、わしはいまいい酒をひとびん西の館の太郎どんからもらったので、月を見ながら縁側でやろうとしていたのじゃ。いいとこへみなさんこられた。ひとつつきあいなされ。」
ひとの善い老人はそういって、五人の盗人を縁側につれていきました。
そこで酒をのみはじめましたが、五人の盗人と一人の村役人はすっかり、くつろいで、十年もまえからの知り合いのように、ゆかいに笑ったり話したりしたのでありました。
するとまた、盗人のかしらはじぶんの眼が涙をこぼしていることに気がつきました。それを見た老人の役人は、
「おまえさんは泣き上戸と見える。わしは笑い上戸で、泣いている人を見るとよけい笑えて来る。どうか悪く思わんでくだされや、笑うから。」
といって、口をあけて笑うのでした。
「いや、この、涙というやつは、まことにとめどなく出るものだね。」
とかしらは、眼をしばたきながらいいました。