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はなのきむらとぬすびとたち

花のき村と盗人たち

新美 南吉

「花のき村と盗人たち」帝国教育会出版部、1943(昭和18)年9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,710 字 · 20 页

青空文庫

そしてもう歩きだしました。弟子たちはびっくりしましたが、ついていくよりしかたがありませんでした。

たずねて村役人の家へいくと、あらわれたのは、鼻の先に落ちかかるように眼鏡をかけた老人でしたので、盗人たちはまず安心しました。これなら、いざというときに、つきとばして逃げてしまえばいいと思ったからであります。

かしらが、子供のことを話して、

「わしら、その子供を見失って困っております。」

といいました。

老人は五人の顔を見まわして、

「いっこう、このあたりで見受けぬ人ばかりだが、どちらから参った。」

とききました。

「わしら、江戸から西の方へいくものです。」

「まさか盗人ではあるまいの。」

「いや、とんでもない。わしらはみな旅の職人です。釜師や大工や錠前屋などです。」

とかしらはあわてていいました。

「うむ、いや、変なことをいってすまなかった。お前達は盗人ではない。盗人が物をかえすわけがないでの。盗人なら、物をあずかれば、これさいわいとくすねていってしまうはずだ。いや、せっかくよい心で、そうして届けに来たのを、変なことを申してすまなかった。いや、わしは役目がら、人を疑うくせになっているのじゃ。