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わかとのじょなんき
若殿女難記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页
「この馬鹿者、縛り首だぞ」こう云って若さまはくすくす笑った。「うまいだろう紋太夫、すっかり覚えちゃった」
寝間を出た紋太夫は、別間で一味と密会をした。驚くべし、そこには国許から供をして来た侍が十三人も加わっている、つまり奸臣は江戸にも津山にもいて、両者通謀のうえ事を計ったものらしい。供頭は脇屋白左衛門と云うが、彼を入れて僅か三四人しかまともな家来はいないということになる。
「それで、あの方の始末はついたのだな」こう紋太夫がきいた。
「御念には及びません」宙野儀兵衛が一味を代表して答えた。「私と金吾武吉郎がお伴れだと申して、首尾よく――」
「死体から足の付くようなことはあるまいな」
「決して」金吾武吉郎なる者がきっぱりと頭を振った。「その点は大地がくつがえりましょうとも御懸念は無用です」
「それは結構」紋太夫は大きく頷いた。「――おのおのの協力でここまでは無事に運んだ、が、これから御親子御対面、将軍家おめみえ、並びに御為派追放の大事が残っておる。これを果すまでは油断大敵と心得、いっそう気を緊めてやって貰いたい、あの馬鹿者のことは宙野と金吾に任せるから、ぬかりなきよう特に注意して頼みたい、ではこれで――」