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わかとのじょなんき
若殿女難記
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页
「よし二三日は手足を伸ばして呑め、家臣引見の式までは息をつかせてやる」
紋太夫は珍しい機嫌でこう頷いた。
その夜の酒宴も格式ぬき順序ぬきの繩暖簾的豪華さであった。若殿はどじょう汁や鰯の塩焼をせがまれ、侍女たちに景気よく裸踊りをお命じになった。
「さあみんな裸になれ、すっ裸になって底抜けに踊ってみせろ」
だが本当に彼女たちの一人が帯を解き、緋色の下着の袖をぬくのを見るとびっくりして手を振りながら、
「やめろやめろ」と叫んだ。「とんでもないやつだ、ここで本当に裸になるということがあるか、洒落のわからねえ女は始末にいかねえ、おめえ屋島とかいったな」
「はい屋島と申します」
「洒落がわからなくちゃあいけねえぞ洒落が、なあ、盃をやるから一杯やんねえ」
なんだか訳のわからないことを云ってこじ付けたが、屋島なる腰元はお言葉の裏にある意味を解して全身かっとなり、お盃を受けながら思いのたけを籠めて若さまを瞶めた。――その結果は酒宴の終ったあと、若さまが御湯殿へいらっしゃったとき現われた。酔心地でうっとり湯槽に浸っておいでなさる。
「やい紋の字をしょっぴいて来い、若殿の御入浴だぞ、来て垢を擦り奉れだ、あーっときた、なんでえ面白くもねえ、侍女だって腰元だって乙に済ましあがってとーんと一ちょう端唄のいける女もいやあしねえ、あーっときた、