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わかとのじょなんき

若殿女難記

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1948(昭和23)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,611 字 · 45 页

青空文庫

三人の侍臣に念を押して出てゆくと、若さまは大笑いに笑いだした。

「みんな固くなるこたあねえぞ、紋太なんぞおれの家来だ、さあ呑め、隠れんぼうが悪けれあめくらの鬼だ、じゃんじゃん騒ごう」

「若さま少し静かにあそばせ」宙野が渋い顔をした。「私どもが迷惑を致しますから」

「じゃあねぎま鍋でも持って来い、そいつで呑み直しだ、早くしろ」

だが、酒宴見物もお飽きなされたでござろう、話も少々いそがしく相成った。――と申すのは、その明くる夜のことだが、琴太夫掠去の善後策を講ずるため、一味が中屋敷で集まった帰途、またしても大目付小林三之丞が暴漢に掠われたのである。こんどは供を五人伴れていたが、相手は十人で来て旋風のように誘拐し去った。後には封無しの手紙があり、「――お次は、中老、角田どの御要心のこと。大」と書いてあった。――大、大とはなに者であるか、紋太夫はすぐ若殿の安否を見にいった。酒宴の支度もしてあり、侍臣も腰元たちもいるが、若殿と宙野がみえなかった。

「若殿はいかがなされた」

「お湯殿でございます」窓井益造が肩を張って答えた。「お悪酔いをあそばされまして、醒ましにおいであそばしたのです」