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やぶのうぐいす

藪の鶯

三宅 花圃

「藪の鶯」金港堂、1888(明治21)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,356 字 · 65 页

青空文庫

なかなかにかんしゃく玉の発裂するもととなり。ともすれば天井と睨めくらをして。にがりに苦りて言葉なし。アアこの神経というものはおそろしきものなり。折にふれては鬼神妖怪の眼の当りにおそいきたるかとみれば。いつしか嬋娟たるたおやめの側に立つかと思うなど。千変万化さまざまにうつり行く。げに物思う折の現はまた一場の夢なりかし。ややありてすこし夢のさめしようなる風情にて。あくび二ツ三ツして。やおら立ちあがりて障子を明け。庭へ出でて花壇のまわりを三べんばかりあてどもなくあるきながら。わざと浜子の部屋のあたりをさけて。おもての方へおもむろにあゆみきたれば。馬丁部屋の方にあたりて。ささやきかたらう声笑う声聞えけり。下ざまのことになれざる耳には。いとめずらしくおぼえられてや。やおら立ちよりて聞かんとすれば。主の足音をしりてかけ来たる大いなる猟犬の。媚をささげて足元にまつわるを眼もて制し。小腰をかがめてそが頭をかいなでつつ聞けば。

車夫「エエオイ。こねえだはの。おいらアほんとにむねくそがわるくっての。

馬丁「どうしたのだ。

車夫「どうしたってこうしたって。お前のめえだがの。