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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
「嬶天下さ」
「同じことじゃないか」
「教育のあるのにもあんなのが随分いるんだぜ」
「然う然う。活動で見たね」
と話は差当り婦人労働者で持ち切った。
散髪屋の間近に来た時、
「君、あの爺さんが入るぜ」
と僕は予感があった。待たされるのが辛いから神経過敏になっている。
「何あに、大丈夫だよ」
と文一君が保証した。成程、その通り行き過ぎたから安心した刹那、爺さんは思い直して立ち止まった。
「いけないいけない」
と言っても最早晩い。クルリと向き直って入ってしまった。僕は散髪屋ではいつもこの手を食う。真の一足違いで三十分も新聞を読ませられる。
「込んでいるようだぜ。君は先に寄れば宜かったのにね」
と文一君は気の毒がった。
「何あに、未だ早いよ」
と高を括って入ったが、実際もう一杯だった。
「好いお天気が続きますなあ」
と一足違いの爺さんは唯一つ残っていた椅子を占領していた。刻限を見計らって出て来たのに踏切の辰さんが祟ったのである。よくよく待たされる運命だ。
「坊ちゃん方お揃いですな。もう直ぐですよ」
と親方は愛嬌が好い。尤もこの男のもう直ぐは三十分から一時間に亙る。
「やあ、これは大分込んでいるな」