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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

とそこへ又一人やって来た。矢張り一足違いだったけれど、此方は一世紀前から待っているような顔をしてやった。

「いらっしゃい。旦那、もう直ぐでございます」

と親方は剃刀を研ぎながら迎えた。

「待つかな」

と新来の客は腰を下した。可哀そうに、僕と文一君が占領しているから、新聞も附録を読まなければならない。

親方は剃りかけた髯に戻って、

「それで今のその策というのは何んな寸法ですか?」

と話の続きを始めた。

「名案だけれど、多少金がかかるぜ。日当が要る」

「何うせ競争ですから、金に糸目はつけませんや」

「大きく出たね」

「何うします?」

「謀事は密なるをもって好しとする。ここで公開しちゃ駄目だよ」

とお客さんは勿体をつけた。

「大丈夫ですよ。皆御贔屓の方ばかりです」

「それじゃ秘伝を授けようか。乞食を狩り集めて来て差し向けるのさ。親類に二人や三人はあるだろう?」

「冗談仰有っちゃいけませんよ」

「これは利くぜ。汚い奴ばかり出入りすれば自然客が落ちるからね」

「成程、考えましたな」

「本職でなくても宜い。腫物のあるのや禿頭病白雲田虫湿瘡皮癬なんてのを見繕って、入り代り立ち代り坐り込ませる。