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ひょうしゃくかんにんき

評釈勘忍記

山本 周五郎

「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页

青空文庫

と老人は胸のところでなにかを握るまねをした、「こうぐっと緊めるんだ、いいか、さてそこで、こんどは相手の身になって考える、こいつがこんなことを云ったり仕たりするのは、おれがいつか知らずに侮辱したとか、不愉快な思いをさせたなんということがあるのではないか、もしなにもないとすれば、こいつはひどく運の悪いことか思惑はずれがあって癇が立っているんだろう、気の毒に、――こう思ってやる、またどうしても気の合わぬ者とか、厭なやつ、愚図、高慢な人間などはなるべく長所をみつけるようにするんだ、あいつは大嫌いだが鼻はみごとだとか、意地は悪いが耳が立派だとか、愚図だけれども気は好いとか、なんにも取柄はないがこんなに取柄のないということも一つの取柄だとか、根性は曲っているが足は真直だとか」

「もしもがに股だったら、――」

「そしたら手とか、背骨とか、鼻筋とか」

「それがどこもかしこも曲っているとすると、――」

「そうすれば詰り、全体が曲ってるとすれば、詰りそれなりに、統一が取れている訳で、統一が取れているということはそれなりに真直だということになる、――だが口を出すな、話がこんがらかっていけない」