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ひょうしゃくかんにんき
評釈勘忍記
山本 周五郎
「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页
三
という封建的政略的主旨から存続されている訳だった。こういう次第なので、この組を支配する組がしらが難物だった、内には豹虎の如き連中を抱え、外には家中一般との折合をつけなければならない、これは裏急後重の腸疾患を持って三三九度の席に列なると等しく、臀を押えて中座するか、とりはずして恥をかくかのどっちか一つと相場が定っていた、それで「三十人組を預かるには妻子親族と絶縁してかかれ」という金言ができたくらい、嫌われた役目だったのである。
三
千蔵に庄司を再興させ、三十人組の支配を宛がうという案は紋太夫から出たものだ。庄司はいずれ中老の席に直る家格なので、ひと修業させる意味もあるし、わる悪戯な甥に眼から火の出るような思いをさせてやりたいという、無邪気な意地わる根性もあった、然しさて当人が来てみると、意地わる根性どころか急になにもかも心配になって、なんとか甥の短気を封じ、まん丸でなくともせめて楕円形ぐらいには勤まってゆくようにと気を揉みだしたのである。「人間には勘忍袋というものがある」既にあれから五日めとなって紋太夫の意見はようやく普遍性を帯びてきた。
「おまえも人間である以上は持っている筈だ、まずそれをぐっと緊める、こう――」