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ひょうしゃくかんにんき
評釈勘忍記
山本 周五郎
「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页
九
藩の模範たらねばならぬ、鍛錬とはなんぞ、――須井栄之助、おまえの預かる組はなにを以て鍛錬とするか、おまえの組の鍛錬とはなんだ」
「――す、水練で……」
「はっきり申せ、なんだ」
「水練でございます」
「よし、猿山四郎次の組はなんだ」
「木登りでございます」
「有賀は」
「速足です」
「よし、――水練は水練、速足は速足、富田弥六は三組用達として明日から鍛錬にかかるんだ、布令に従わぬ者は支配へ申し達して屹度処罰する、わかったか」
そして千蔵は座を立ち大股にずんずん廊下に出ていった、更に残りの獲物を探すために、的場の森の約束手形を振出す為に、――そしてその翌朝。
九
まだ仄暗い朝の五時、いま明けた許りの宇野家の門をはいって、こわ高に玄関で案内を乞う者があった。庄司千蔵である、「たのむ、たのむ」遠慮も会釈もない叫び声だ、奥から家扶が走って来て、「お静かにお静かに」と制止した、「なに御用で、何誰さまでございます」
「かなどのに伝言がある、こう伝えて貰いたい」千蔵は更に大きく声を張って叫んだ、「臆病犬をひと纒めにして、庄司千蔵の拳骨の音をお聞きにいれる、おこころあらば、的場の森へ六時までに来て頂きたい、宜しいか」