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ひょうしゃくかんにんき
評釈勘忍記
山本 周五郎
「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页
四
へ顎を見せたのち、悠々と門の外へ去っていった。……気の出るほど聞かされた伯父の意見と、この二つの経験、就中勘忍袋の発見に依って、千蔵は新生活に対する自分の力量に確信を持っていたのである。
四
世の中は艱難の待合室であり、人間は胎内より業苦を負って生れるという、されば人生は風雪を冒して嶮難悪路を往くが如く、二十四時寸刻の油断もならぬ酷薄苛烈なものである、千蔵は組がしらとして役所へ勤めだすなりそれを知った。彼は三十人組の士風作興という任務を授けられていた。かれらの傍若無人と横着高慢はその本分を尽さないところに原因がある、木登り、水練、速足などという、それぞれの特技に精励勉強させれば、しぜん謙抑温順になり節義道徳を守るであろう、こういう意見に依って千蔵の任務は計量公課されていたのである。――出仕の第一日は老職の前で組下の小頭五人に紹介され、更にかれらの案内で詰所へいって、六十人の組下に紹介された。この儀式はごく単純なもので、要するに「庄司千蔵が今日からおまえたちの組がしらになった」という布告である、ところが儀式が終ったとき千蔵は極めて怪訝な印象を受けた。