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ひょうしゃくかんにんき

評釈勘忍記

山本 周五郎

「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页

青空文庫

と叱りつけ、これにも明朝六時的場の森の約束手形を振出した。中の口から廊下へ上ると、富田弥六といっしょになったから、「おい、おまえの名前はとんだやろうとも読めるが、洒落れてるなあ」と云った。弥六は眼を剥いて反った、恐ろしく反ったのでまた顎だけしか見えなくなった、「ほらまた反りゃあがった、おまえその他に芸はねえのか」

「侮辱だ、侮辱だ」弥六は金切り声をあげた、「断じて赦せない、武士の面目が立たない、みんな証人になって呉れ、証人になってこの」

「やかましい、皮のやぶけた太鼓をそう叩くな、口惜しかったら的場の森へやって来い、朝の六時に待ってるぞ」

そしてさっさと歩きだした。三十人組の詰所へはいるとうまいことに有賀子之八が猿山四郎次という木登組の小頭と茶を飲んでいた。猿山はいつか奥野と吉木多左衛門を使って嘲弄した男である。――茶碗と土瓶を前に置いて、有賀と四郎次が差向いでなにか話している。そのまん中をまっすぐに、千蔵がずかずかと通りぬけた。茶碗がすっ飛び土瓶がひっくり返って、熱い茶が景気よく四辺へはねかった。二人はかまいたちとでも思ったのだろう、子之八は我知らず「なむとらやあ」