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ひょうしゃくかんにんき

評釈勘忍記

山本 周五郎

「新読物」公友社、1947(昭和22)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,889 字 · 36 页

青空文庫

「おまえ洒落れたことが云えるんだな栄の字、うん、――ちょいとしたもんだ」こう云いながらもまだ栄之助の廻りをぶらぶらしている、「然し断わって置くがそれで止せ、それ以上うっとも云っちゃいけない、おれの拳骨は痛いうえに文句なしの待ったなしだ、両方の眼玉の飛出さないうちに黙るほうがいい、――立たないのか」

立たないのかという言葉は天床や襖がびりびりいったほどの大喝である、栄之助は下から発条を掛けられたように跳上った。千蔵はその跡へかっちりと坐り、「ここは組がしらの席だ、おれは組がしらだ、席の順序のわからぬやつは庭へ抛りだす、小頭はみんな出ているのか」

「――出ておられます」蚊のような声で向うから答えたのは奥山兵蔵であった。見ると廊下から焚火の間へかけて、組下の者たちの仰天したような顔が並んでいた。

「おまえ達は向うへ退っていろ、見世物じゃない、小頭はここへ集まるんだ、なにを愚図ぐずしているか、おれは忙しいんだ、てきぱきとやれ」勝敗は決した、四人の小頭は憑きものでもしたようにそこへ坐った。

「みんな出たな」千蔵はじろっと眺めまわした、「それではこれから布令を出すからよく聞け、三十人組は殿御側近の衛士という許りでなく、元亀天正より伝承する唯一の名誉ある職制で、これに属する者は鍛錬これ努め修身を厳にし、職を涜さざると共に一