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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
これがまあ、永年勤めた関守の役得というものでございましょうかな。」
冉有は少し腹が立って来て、天井を睨んだまま、返事をしなかった。
「それはもう、先生のお疲れのことは、よう存じて居ります。で、ほんのちょいと、二言三言お言葉をおかけ下さる間だけで宜しうございます。どうも、お通りがかりにちらとお顔を拝しただけでは、この老爺気が落ちつきませんでな。それに、孔先生といえば、これまで私がお目にかかりましたお偉い方が、総がかりでお向いになっても及ばないほど、お偉い方のようにお察し致して居ります。場合によっては、これを思い出に、私は、関守を打留にしようか、とさえ思っているくらいでございます。」
冉有は少し気をよくした。しかし、まだ取次ぐ気にはなれなかった。
「いや、今すぐと申すわけでございません。明日のお立ちまでにちょいとお目にかかる事が出来れば結構でございます。なあに、私は、お待ちする分には、夜徹しでも構わないのでございます。よくこれまでにも、そういう事がありましたでな、はい。」
冉有は思わす吹き出してしまった。関守はすかさず、
「お願いが出来るでございましょうか。