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ろんごものがたり

論語物語

下村 湖人

「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页

青空文庫

」

「失敬なことをいうな。」

「僕はこのごろ先生の前に出ると、妙にしっとりした気分になるね。」

「そりゃどういう気分だい。」

「どういう気分ッて、別にそれ以上説明のしようがないんだが、とにかくしみじみと嬉しくなるね。」

1孔子の門人中で、まだ二十歳台の元気者ばかりが、十人ほども集って、しきりに雑談をやっている。子游が最年長で二十五歳子輿と子柳が同年で二十四歳、それ以下のところでは、子張、子賎、子魯、子循といったような連中が交っている。このうち、年の割に重きをなしているのは子輿である。彼は、本名を曾参といって、一見魯鈍ではあるが、反省力の強い青年で、門人中で孔子に最も嘱目されている一人である。彼より三つ年上の有若や、二つ年上の子夏がいると、彼と丁度いい相手なのだが、今日はこの席に見えない。

雑談はなおつづく。

「それはそうと、先生はこのごろ默ってばかりいて、あまり教えて下さらないじゃないか。」

「そうでもないだろう。ずいぶん叱られている連中もあるぜ。僕もその部類だが。」

「君は格別さ。」

「馬鹿をいうな。君だって、いつもちくちくやられているじゃないか。」

「おいおい、喧嘩はよせ。