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ろんごものがたり

論語物語

下村 湖人

「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页

青空文庫

……しかし実際だね、先生があまり口を利かれなくなったのは。」

「そうかな、僕はそんな風には思わないが。」

「いや、たしかに以前に比べると沈默家におなりのようだ。」

「このごろ急にッていうわけでもあるまい。大たい必要以外には、あまりものを言われない方なんだ。」

「それにつけて、ついこないだ面白いことがあったぜ。」

「面白いこと? 先生についてかい。」

「うむ、やはり、君等のように、先生の無口を不平に思っている連中だろうと思うが、五六人揃って、先生に抗議を持ちこんだそうだ。」

「それは面白い。どんな抗議だい。」

「先生は人によっては馬鹿に丁寧に教えて下さるが、自分たちにはちっとも教えて下さらない、といったんだそうだ。」

「ずいぶん失礼なことを云ったものだね。」

「失礼なもんか、僕等も同感だよ。」

「同感でない人もあるぜ。」

「まあ先を聞こう。それで先生どう云われたんだい。」

「そりゃ、きまっているさ。」

「いやに聰明ぶるね。君、その答を豫期していたとでもいうのかい。」

「いや豫期してはいなかった。豫期していたら、一緒に抗議に行くはずがないじゃないか。」

「なあんだ、君も一緒か。それで、きまっている、もないじゃないか。