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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
何分、宮廷権臣の間に、そうした根本の道が紊れていて、政策はどうのこうのという段取までは、行っていなかったのでな。」
「景公は、先生のお言葉に対して何とかいわれましたか。」
「君臣父子がそれぞれの道を履み行うことが出来なければ、財政がどんなに豊かでも、自分は安んじて食うことが出来ない、とまでいって居られた。しかし、大夫や寵妃に気がねして、太子を立てることさえ出来ない始末では、何とも仕方がなかったのじゃ。」
「先生がご自分で政治をおやりになったのは、すると、やはり魯が始めてでございましたね。」
「そうじゃ、魯が始めてでもあり終りでもあった。しかし、あの頃はもうわしも五十をこしていた。はっきりと天命を知ることが出来ていたのじゃ。で、わしは、その信念に基いて、何の不安もなく政を行うことが出来た。中部の宰から、司空、大司寇と六七年の間、仕事をやって来たが、今から考えても、わしは間違ったことをしたとは思わぬ。天は不易じゃ。何者を以てしても、これに打ち克つことは出来ぬ。この不易なるものの心に結ばれて政を行っていると思えば、何の不安もない。成敗利鈍はもう問題外じゃ。しかし――」